「紫に白の絵の具をたっぷりとかきまぜたようなリラの花の色と、その香りが好きだった」とは、昔読んだ三浦綾子著『ひつじが丘』の冒頭ですが、いまだに春になり、こぼれんばかりに咲いているライラックの姿を見ると、この小説を思い出します。
当時「リラ」という植物の存在を知らなかった私はすぐさま図鑑で調べ、そのとき初めて「リラ」の別名が「ライラック」(和名:ムラサキハシドイ)であること、ヨーロッパ東南部、バルカン半島原産で、日本へは明治中期に渡来してきたことを知りました。
以来春になると、優しい雰囲気とすばらしい芳香を持つこの花を見つけるのが楽しみとなっています。
ところで、ライラックの甘く華やかな香りは、いまでこそ香水やフレグランスキャンドルとして楽しまれていますが、ひと昔前までは似た香りの香料を混ぜた合成香料しかありませんでした。植物から香水の原料となる香料を作るには、エーテルのなかに花弁を入れて花の香りを移し、それを蒸留して残った花蝋が香料となります。しかしライラックの場合、作業途中で香りが壊れてしまい、天然の香りを抽出することができませんでした。 |